地域振興の道しるべ

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日本では無理? ステンレスの橋

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 山形の老舗醤油蔵を訪問したときに直接聞いた話です。「いいか、この蔵の土間には大量の塩が練り込んである。もしも将来塩が手に入らなくなったら土間の土を掘り返してそこから塩を取るんだ。」何代か前の当主がそのようなことを言い遺されたそうです。

 話は突然変わりますが、上の写真は8年前シンガポールで写したものです。この橋を渡る殆どの人はその変わったデザインに目がいくことでしょう。しかし、私にとって何がびっくりしたって、デザインの奇抜さもさることながら、橋がステンレスで出来ていたからです。ステンレスのコストが鉄の数倍であることを知っていた私にはそれが驚きでした。

 日本でステンレスの橋を作りましょうなんて提案しようものなら、その材料コストだけで即刻却下となること請け合いです。それがサラッとできてしまうシンガポールという国家の勢いにもびっくりしたわけです。

 普通の橋は錆びないようにするためのメンテナンスに膨大なコストの掛かる構築物です。巨大な橋など塗り直しが終わったと思ったら、最初に塗り始めた端からまたすぐに塗り直さないといけないと言われるくらいです。

 でも、素晴らしいデザインの橋がステンレスで出来ていたら、おそらく千年経っても殆ど錆びることなく輝き、そして愛され続けているのではないでしょうか。その間、塗替えのためのメンテナンスコストはほぼゼロです。資産家の方はこんなところにお金を使えば千年以上自分の名前が残せるかも知れませんね。

 日本も観光立国を目指すなら、モニュメントとなるような建造物には目先のコストだけで判断を下すようにはなって欲しくないものです。

 また、この橋に掛けたお金は、それがすべて消費されてなくなってしまった訳ではありません。錆びることのないステンレスはお金が形を変えて貯蓄されたも同然。もしも将来この橋を撤去せざるを得なくなったとき、この橋のステンレスは殆ど再利用することができます。おまけにステンレスに含まれるニッケルは希少資源ですから、その時ステンレスは建築当初の何倍にも値上がりしていることだってありえるのです。

 昔は貴重だった塩を敢えて子孫のために形を変えて蓄えておいた醤油蔵当主のように、長期的な視点を持って街づくりを推進して欲しいものです。

 

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 この橋が掛かっているのは、皆さんご存知のここでした。ヘリックスブリッジという名前です。