地域振興の道しるべ

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地銀の危機に思う HSBCのセキュリティと利便性

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 「高性能なレーダーの開発なくしてこの戦争には勝てない。」技術者の直訴も虚しく、海軍首脳部はレーダー開発の重要性を理解しませんでした。それが主たる要因となって日本はマリアナ海戦で大敗を喫し、戦況は一気に米国優位に傾きました。当時日本には優秀なレーダー開発の技術者がおりましたので、海軍首脳部がレーダー開発の重要性を理解し、それを推進していたなら、太平洋戦争の戦況は大きく変わっていたことでしょう。

 最近、日本の金融はセブンペイやドコモロ座で発生した詐欺事件によって、その信用が大きく揺らぎました。これらの事件の根底にあるものとして、私は日本の組織のリーダーたちが往々にして、リーダーたるもの組織のなかで一番偉くて優秀でなくてはならず、自分が劣っている面を見せてはならない、このような観念に縛られているのが問題だと感じておりました。そんなリーダーは虚勢を張るばかりで、組織内では技術者の進言も遠ざけてしまいます。

 ドコモロ座のセキュリティ問題は、NTTドコモ幹部だけではなく、NTTドコモと契約した多くの地銀も金融庁も事前にその脆弱性を見抜けませんでした。ですから日本の組織の多くは、率直な意見交換もしづらい似たりよったりの状態なのではないかと想像します。日本の場合、リーダーのあり方を考え直すことから始めないと組織が息を吹き返すことはないのかも知れません。前置きが長くなりましたが、本題に入りましょう。

 イギリスに本拠を置くHSBCという世界最大級の銀行ですが、香港支店では香港居住者以外でも口座開設ができることから、日本人にも人気の銀行です。私も香港へ旅行した折に口座開設してみました。その後ネットバンキングやキャッシュカードを使ってみて何が驚いたかと言いますと、そこには煩わしいほどのセキュリティレベル、そして日本の銀行には足元にも及ばないサービスレベルの高さがありました。どう違うのか一部を箇条書きにしてみましょう。

・キャッシュカードの暗証番号は日本のように4桁ではなく6桁

・ネットバンキングのパスワードは2つ必要

ワンタイムパスワード用のセキュリティデバイスは起動時にパスワードが必要

ワンタイムパスワードは一種類ではなく、口座ログイン、振込など手続きによって複数パターン用意されている

・ATMからの引き出し可否や上限額はネットからいつでも期限付きで設定可能

・大きな金額の送金は事前にネットで登録したところにしかできない

・口座内で様々な通貨への外貨両替が24時間可能で、日本の銀行の外貨預金のように多額の手数料が掛からない

・僅かな手数料で多くの国のATMから現金が下ろせる(日本の銀行は日本国内だけ)

・UnionPay(銀聯)のデビッドカード機能が標準で付いているので、国内外の多くの店で買物ができる

 どうでしたか。セキュリティが厳しいので、日本で真似したら顧客からの苦情が絶えなくなるのではないかと銀行内部では反対の声が聞こえてきそうですね。でも、セキュリティを甘くしてしまって、大金が勝手に引き出されてしまっては元も子もありません。日本の銀行ではセキュリティ強化というと、長文を顧客に読ませて承諾のチェックを入れさせるという責任回避型対応が増えてしまうのが残念なところです。そちらではなくて、お金が盗まれないようにする対策が第一なんです。

 地銀に限らず日本の銀行関係者の方々は今のうちに香港へ出向いてHSBCの口座を作り、ネットバンキングの諸サービスやキャッシュカードを利用して自行との違いを肌で感じてみられては如何でしょうか。そして、HSBCを超えるようなセキュリティ、サービス、ビジネスモデルを実現するにはどうすれば良いのか、経営者も技術者もフラットになって討議することから始めていただきたいと切に願っております。

 銀行の皆様、素人が偉そうなことを書いてすみません。でも日本の銀行のセキュリティやサービスが世界レベルから大きく水をあけられていることは厳然たる事実なのです。

 

参考文献:海軍技術研究所 ー エレクトロニクス王国の先駆者たち ー 中川靖造