今回は前回の続きですが、花椒栽培をお考えの方のために、花椒に関してよりマニアックな情報をお伝えしておきたいと思います。花椒に関しては日本で詳しく知っている人が殆どおらず、中国人でもよく知っているのは極一部の人だけのようです。
まず、花椒という名前ですが、これは食材としての呼称で、植物名としてはカホクザンショウ(華北山椒、学名:Zanthoxylum bungeanum)と呼ばれています。また、日本ではあまり流通していませんが、四川料理では青花椒(チンホワジャオ、別名:藤椒)というものも使われます。これはカホクザンショウとは全く異なる種類で日本のフユザンショウの亜種と分類されています。日本ではこの青花椒も含めて花椒と称することがあるので、混同しないよう注意が必要です。
そして、これは中国人から教えていただいたことですが、花椒は中国北部で栽培されている北椒(ペイジャオ)、南部で栽培されている南椒(ナンジャオ)と区別されることがあります。日本に輸入されているものは殆どが北椒ですが、最近は四川料理の人気とともに香りはほぼ同じでも、より痺れの強い南椒も入ってくるようになりました。四川省ではこの痺れの強いものが珍重され、四川省漢源には最高品質のものが採れる地域があり、大昔皇帝に貢がれていたとのことで、貢椒(ケンジャオ)のブランドで呼ばれています。上記の写真はまさにこの貢椒です。前回の記事の写真は私の栽培している北椒ですので、その違いを確かめてみてください。
この貢椒(南椒)は標高2,000m級の山岳地帯で栽培されており、私が日本で栽培している北椒に比べて、葉の艶が強く常緑樹であるかのようなぶ厚い葉をしておりました。また、果実も艶が強く赤さも鮮やかで金平糖のような突起が強くなる傾向があるようです。貢椒の痺れの強さは栽培地の激しい寒暖の差と強風によるものと言われています。北椒も南椒(貢椒含む)も植物としての分類上は同じ品種ですが、ひょっとしたら亜種くらいの差が生じているのかも知れません。
さて、日本での栽培にどれが向くかですが、和食との合わせやすさで言うと私の結論は程よい痺れ具合の北椒です。南椒を栽培するなら、四川料理等強烈な辛さや痺れを要求する層をターゲットとする必要があると感じました。ただ、南椒を日本で栽培しても本場と同じような品質のものができるのかは、試してみないことには分かりません。また、青花椒も南椒と同様なターゲットになると思います。ちなみに青花椒は花椒とは香りが全く異なり、柑橘に近い香りがします。以上、中国の花椒に関して私の知る限りをまとめてみました。栽培を検討される方の参考になればと思います。
次回は中国における花椒栽培地の状況をお伝えする予定です。