地域振興の道しるべ

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長持ち、メンテナンスレスの時代へ(1)   エキスパンドメタルの建築外装

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 私が住む街の市民会館が今年取り壊されました。できたのは私が小学生の頃ですから、ちょうど50年くらいでしょうか。短いような、長いような、いや短いと言うべきでしょう。鉄筋コンクリートで造られた街を代表するような大きな建物が、人の平均寿命よりも短い期間で壊されていくというのは、文化というものを蔑ろにした時代の象徴であったかのように思えてなりません。

 そう言えば、子どもの頃親に連れて行ってもらった心斎橋のそごうや大丸の階段には大理石などの天然石がふんだんに使われていて、なかには大きなアンモナイトが沢山含まれているような立派なものでした。ところが最近建ったデパートというのは、使われているのが薄っぺらな工業化建材ばかりで、この先少し古びてきたらすぐに剥がされてしまいそうな気がします。

 日本経済が右肩下がりになった状況下では予算が足りないと言えばそれまでですが、この先益々景気が悪くなるようなことになれば、メンテナンスに掛かるコストすら充分に捻出できなくなるということも想定しておかねばなりません。よって巨額な費用、とくに税金を投じて建てられるような建造物は、築後50年程度のメンテナンスコストも含めてその仕様を検討されるべきではないでしょうか。決して贅沢はして欲しくありませんが、安物買いの銭失いにはなって欲しくないものです。

 大きな建造物は、その外壁を補修するための足場構築費用だけでも馬鹿になりません。ならば初期の建築コストが若干上がろうとも外装材の長寿命化、メンテナンスレス化と共に建築意匠が向上するようなデザインを採用すれば、末永く住民から愛され、かつ50年程度で解体されることのない建造物にもなり得るでしょう。

 今回は意匠性が高く耐久性の高い建材の1つ目として、日本ではまだ実績の少ないエキスパンドメタルを紹介します。エキスパンドメタルとは七夕の網飾りの構造をした金網のようなものです。

 その材料としてよく使われるアルミニウムは鉄のように内部まで錆びることがなく、屋外でも半永久的に使えますし、遮熱、防風などを目的として利用することもできます。また、写真の建物のような意匠にこだわった曲面加工も可能です。

 エキスパンドメタル以外の意匠性金属プレートとしては、パンチングメタルやレーザーカッティングされたプレートが採用されることもありますし、素材としてはコスト高となりますがステンレス鋼(アルミより硬いので薄くはできる)という選択肢もあります。デザインによっては、夜間内部から漏れる灯りで建物全体を行灯のように演出することも可能でしょう。

 街のモニュメントとなるような建物が格好いいと住民は良い街に住んでいるような気分になれるものです。もしもそんな建物がボロボロになってメンテナンスもされないとしたら、それこそ街の衰退の象徴と化してしまうことでしょう。そんな街に人々が住み続けたいと思うかどうかを50年以上先を見越して行政サイドでは察して欲しいのです。次回は、外装材としてのテントに関して記事にする予定です。

写真の建物:Messe Basel New Hall (スイス)

出典:archdaily